三国志の名将・程普の活躍
三国志の時代、多くの英雄たちが乱世を駆け抜けた。その中で、孫呉の古参武将として名を馳せたのが程普（ていふ）である。彼は孫堅・孫策・孫権の三代に仕え、数々の戦場で功績を上げた。その武勇と忠義は孫呉の礎を築くうえで欠かせないものであり、特に孫堅の時代から活躍していた数少ない武将の一人として、周瑜や黄蓋と並び称された。
本稿では、程普の生涯と戦績を、具体的なエピソードを交えながら詳しく紹介する。
1. 程普の出自と孫堅への仕官
程普は汝南郡（現在の河南省）の出身であり、幼い頃から武勇に優れた人物として知られていた。彼がどのような経緯で孫呉に仕えたのかは明確ではないが、孫堅の時代からその配下として活躍していることから、比較的早い段階で孫家に仕官したと考えられる。
孫堅は袁術の配下として董卓討伐に参加しており、程普もその一員として各地を転戦した。特に孫堅が荊州を平定する戦いにおいて程普は活躍しており、その武勇を証明することとなる。
2. 襄陽の戦いでの活躍
程普が初めて歴史に登場するのは、孫堅が荊州の劉表と戦った襄陽の戦いである。
当時、孫堅は荊州を支配する劉表と対立し、劉表配下の黄祖（こうそ）と戦った。程普はこの戦いで孫堅の副将として前線に立ち、勇猛果敢に戦った。しかし、戦況は不利となり、孫堅は黄祖の軍勢に包囲されてしまう。そして、孫堅は敵の伏兵により戦死した。
この時、程普は孫堅の遺体を回収し、兵をまとめて撤退する役割を果たしたとされる。この働きにより、孫堅亡き後も孫家に忠誠を誓い、引き続き孫策に仕えることとなった。
3. 江東平定戦での活躍
孫堅の死後、息子の孫策（そんさく）が父の後を継ぎ、勢力拡大を目指した。孫策は最初、袁術の配下として戦っていたが、やがて独立し、江東（現在の江蘇省南部から浙江省一帯）の支配を目指す。
この時、程普は孫策の有力な将軍の一人として、各地の豪族を撃破する戦いに参加した。
特に、孫策が劉繇（りゅうよう）を討ち、呉郡・会稽郡を平定する際に、程普は前線で戦い、孫策軍の勝利に大きく貢献した。この戦いでは、孫策軍は兵力が劣勢であったが、程普の巧みな指揮により敵軍を分断し、各個撃破することに成功した。
この戦いの後、孫策は「小覇王」と称されるようになり、江東の支配を確立することとなる。程普はその軍功により、孫呉の中でも重要な地位を占めるようになった。
4. 孫権の時代と赤壁の戦い
孫策の死後、弟の孫権（そんけん）が後を継ぐ。孫権の時代になると、程普は中郎将・討逆将軍といった地位を与えられ、孫呉の軍事を支える重鎮となった。
この時期、最大の戦いとなったのが赤壁の戦いである。曹操が大軍を率いて南下し、孫権は劉備と同盟を結んでこれを迎え撃つことになった。
程普はこの戦いにおいて、黄蓋とともに水軍を指揮し、曹操軍の船団を火攻めで焼き払う作戦を成功させた。赤壁の戦いは孫呉と蜀漢の勝利に終わり、曹操の南進を阻止することに成功する。この戦いでの功績により、程普はさらに孫呉内での地位を確立した。
5. 晩年と程普の評価
赤壁の戦いの後も、程普は孫呉の重要な戦いに参加し続けたが、次第に年齢を重ね、前線での戦いからは退くようになった。晩年には、周瑜と対立することもあったが、それでも孫権の信頼は厚く、孫呉の重臣としての役割を果たし続けた。
程普は最終的に病死したとされるが、その正確な没年は記録に残っていない。
孫呉における程普の評価は、「勇猛でありながら、冷静な判断力を持つ将軍」であったと言われている。また、孫堅・孫策・孫権という三代の主君に仕えたことから、「忠義の武将」としても称賛されている。
6. 程普の名言とエピソード
程普は周瑜に対して、「私が戦場を駆け巡っていた頃、お前はまだ子供だった」と語ったという逸話がある。これは程普の誇りと自負心を示すものだが、周瑜との関係は決して悪くはなく、最終的には互いを認め合っていたとされる。
また、程普は酒を好んだことで知られ、「程普の酒、誰も及ばず」と言われるほど、飲酒の逸話が残っている。しかし、それが戦の指揮に影響を与えることはなく、彼の実力は揺るがなかった。
7. まとめ
程普は孫呉の初期から活躍し、その忠誠心と武勇で歴史に名を残した。孫堅の時代から江東平定、赤壁の戦いまで、多くの戦場で功績を上げた彼の存在は、孫呉が強大な勢力へと成長する上で欠かせないものであった。
三国志においては、周瑜や陸遜といった名将に比べて目立つ存在ではないが、その功績は計り知れないものであり、孫呉の支柱として歴史に刻まれている。
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