張飛

張飛の活躍

張飛（ちょうひ）は、中国の三国時代において、劉備（りゅうび）に仕えた名将の一人であり、関羽（かんう）とともに「三兄弟」として活躍しました。彼の勇猛果敢な戦いぶりは数々の伝説を生み、多くの戦場で重要な役割を果たしました。ここでは、張飛の活躍をいくつかの戦いを中心に詳しく紹介します。

1. 黄巾の乱での活躍

張飛が初めて歴史に名を刻んだのは、劉備、関羽とともに義勇軍を率いて黄巾の乱に参戦した時でした。黄巾賊（こうきんぞく）は後漢末期に発生した大規模な農民反乱であり、漢王朝の弱体化を象徴する出来事でした。張飛は豪胆で武勇に優れた戦士であり、最前線で戦い、多くの黄巾賊を討ち取る活躍を見せました。この時から劉備、関羽、張飛の三人は義兄弟の契りを交わし、共に戦うことを誓いました。

2. 呂布との戦い（虎牢関の戦い）

董卓（とうたく）の暴政に反旗を翻した諸侯連合軍が結成されると、張飛は劉備、関羽とともに参戦しました。この戦いの中で、最強の武将と称された呂布（りょふ）と激突しました。特に有名なのは「三英戦呂布」と呼ばれる戦いで、張飛は関羽、劉備とともに呂布と渡り合いました。張飛は勇猛な突撃で呂布を圧倒しようとしましたが、呂布はそれを凌ぎ、一騎討ちは決着がつきませんでした。しかし、この戦いは張飛の勇猛さを天下に知らしめるものとなりました。

3. 長坂橋の戦いでの活躍

劉備軍が曹操（そうそう）の大軍に追われた際、張飛は長坂橋で決死の防衛戦を展開しました。劉備の軍勢は、曹操の追撃を受けながら逃げる途中で混乱状態にありました。張飛はわずか二十数騎の兵を率いて長坂橋に立ち、曹操の大軍を迎え撃つことになりました。

彼は橋の上に立ち、大喝して「我が張飛なり！ここを通りたくば首を洗ってこい！」と叫びました。その凄まじい気迫に恐れをなした曹操軍の兵たちは前進をためらい、張飛が橋を破壊したことで追撃を断念しました。この一戦で張飛の勇猛さはさらに知られることとなりました。

4. 巴蜀攻略戦での活躍

劉備が荊州を制した後、益州（現在の四川省）に進出することを決めました。その際、張飛は劉備軍の先鋒として出陣し、重要な都市である巴郡（はぐん）を攻略する役目を担いました。

彼は当時、劉璋（りゅうしょう）の配下であった厳顔（げんがん）という老将と対峙しました。厳顔は勇猛な武将であり、張飛との戦いでは奮闘しましたが、最終的に捕えられました。しかし、張飛は彼を無益に殺すことなく、その豪胆さと忠誠心を評価し、逆に配下に加えました。このように、張飛はただの猛将ではなく、人心を掌握する能力も備えていたことが分かります。

5. 定軍山の戦いとその後

張飛は劉備が漢中を攻略する際にも重要な役割を果たしました。漢中の戦いでは、関羽が荊州で戦う一方、劉備と張飛は曹操軍と対峙しました。特に定軍山の戦いでは、劉備軍の名将・黄忠（こうちゅう）が活躍し、曹操の名将・夏侯淵（かこうえん）を討ち取る大戦果を挙げました。

張飛はその後も漢中の防衛に尽力し、蜀の支配を確立するのに貢献しました。しかし、劉備が関羽を失ったことで魏に対する怒りを爆発させ、呉との戦いを決意した際、張飛はその準備を進めることになります。

6. 張飛の最期

張飛の最期は、戦場ではなく、配下の裏切りによるものでした。彼は関羽の死に激怒し、呉討伐のために軍を編成していましたが、部下に対して厳しい態度を取りすぎたため、部下の范彊（はんきょう）と張達（ちょうたつ）によって寝込みを襲われ、暗殺されてしまいました。

このように、張飛は勇猛果敢な武将として数々の戦いで功績を上げましたが、その粗暴な性格が災いして悲劇的な最期を迎えることになりました。しかし、彼の武勇と忠義は今なお語り継がれ、多くの人々に愛される英雄の一人として三国志の歴史に名を残しています。